暗号資産会計ソフトだけでは足りない理由：税理士に相談する価値とは

暗号資産の取引が増える中、損益計算や税務申告に対応するために暗号資産会計ソフトを利用する人は増えています。確かに、ソフトを使えばCEXやウォレットのデータを取り込み、自動的に損益を算出することができるため、大きな負担軽減となります。

しかし、ソフトだけに依存するのは危険です。なぜなら、暗号資産の税務は複雑であり、実際の申告にあたっては専門的な判断が欠かせないからです。

1. 取引種類ごとの扱いの複雑性

ソフトでは対応困難な取引類型

取引の種類ごとの扱いがソフト任せでは正確に処理できない場合があります。

複雑な取引例：

DeFiでの利回り: イールドファーミングやステーキング報酬
NFTの取引: 作成、売買、ロイヤリティ収入
エアドロップ: 受領時の課税タイミングと評価
ハードフォーク: 新規トークンの取得価額

課税関係の判断

それぞれの課税関係は必ずしも明確ではなく、以下を踏まえて判断しなければなりません：

国税庁の見解
実務慣行
個別の取引実態

ソフトが一律に分類しても、正しくない処理がされる可能性があります。

2. データの欠落・誤りへの対応

よくあるデータ問題

取引データの欠落や誤りに対応できるかどうかが重要な問題です。

データ問題の例：

取引所のサービス停止: FTX破綻のようなケース
データ欠損: API制限や履歴削除
ウォレットの紛失: 秘密鍵の紛失や忘失
不完全な記録: 一部期間のデータ不備

代替手段の検討

ソフトに入力する前の段階で不完全な情報しか揃わないケースは珍しくありません。その場合：

代替資料の活用方法
合理的な計算手法の採用
推定計算の根拠づけ

これらの判断は、税理士の経験が不可欠です。

3. 税務署対応の重要性

申告後の対応

申告後に税務署から照会や調査を受けることもあります。

説明責任の問題

単に「ソフトでこう出た」という説明では不十分であり、以下が求められます：

計算根拠の法的裏付け
関連法令・通達への準拠
取引実態との整合性

税理士の役割

税理士は以下の役割を果たします：

税務調査に備えた合理的なストーリーの構築
納税者の立場を守る代理業務
法的根拠に基づく説明責任

4. ソフトと税理士の適切な関係

ソフトの位置づけ

暗号資産会計ソフトは便利な道具に過ぎません。

ソフトの役割：

データ収集の効率化
基礎的な損益計算
取引履歴の整理

税理士による精査の必要性

実際の申告においては、以下のプロセスが重要です：

ソフト出力結果の検証
取引実態との照合
法令適合性の確認
申告書への適切な反映

5. 専門家相談の価値

安心と正確性の確保

暗号資産投資を本格的に行っている人ほど、税理士に相談することで安心と正確さを手にすることができます。

具体的なメリット

個別事情に応じた適切な処理
税務リスクの最小化
将来の税務調査への備え
継続的な税務サポート

まとめ

暗号資産の税務処理は、技術の進歩とともにますます複雑化しています。会計ソフトは有用なツールですが、それだけでは完結しません。

専門的な判断と経験に基づいた税務処理こそが、正確な申告と将来の安心につながるのです。